「鉄フライパン」と「スキレット」、どんな風に使い分けたらいいんだろう・・・そんな風に思ったことありませんか?
またはこれから購入を考えている方であれば、いったいどちらを購入するべきかと悩んでいるかもしれませんね。
結論から言うと、私はどちらも大好きな調理器具で、アウトドアだけでなく家のキッチンでもしまうすきがないくらい頻繁に登場します。それぞれに良さがありメリットもあればデメリットもあります。
まずは、鉄フライパンとスキレットの違いとそれぞれの特徴を知ることで、ご自身に合った調理器具を見つけることができるかもしれません。
ぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。
鉄製品の特徴
ご存知の通り鉄フライパンとスキレット、どちらも鉄素材でできています。
では、そもそも鉄素材の調理器具には、どんな性質や特徴があるのでしょうか。
➀強度が高い
鉄といえば、「硬い」イメージを思い浮かべがちですが、正確に表現するとそれは間違い。鉄は単独では柔らかい金属で、炭素との化合物になることで硬い素材に変化します。
また、鉄は融点が高い物質なので、溶鉱炉などで超高温にしないと溶解しません。
加工しやすいうえに強度があるため、現代では建造物や機械をはじめ、あらゆる分野で不可欠な素材となっています。
②安価に入手できる
鉄は加工のしやすさや生産量の多さなどの理由で、市場に多く出回っています。なので安価で手に入れることができます。
ダッチオーブンを例に比べても、ステンレス製よりも鉄のダッチオーブンは安価です。
③多様な用途に対応できる
鉄製品は、たたくとうすく広がる「展性」と、引っ張るとのびる「延性」という性質を持っています。
炭素など元素の含有量の制御や加工処理によって、加工しやすく多様な用途に対応することができるのが特徴です。
④磁性・電気伝導性
鉄には「磁性」という性質があります。電磁石という形で電化製品などに使われています。
また、鉄製品は電気を通す「電気伝導性」にすぐれているので、ご家庭のIH調理器でも使うことができます。
ただ、後ほど紹介しますが、製品によってはIH調理器と相性が良いものと悪いものとがあります。
⑤熱伝導性が良い
鉄は熱伝導性に優れているため、調理器具として大変重宝されています。
強火で一気に仕上げる中華料理は、鉄の鍋が使われているのは分かりやすい例でしょう。
⑥錆が発生しやすい
鉄は酸素と非常に結びつきやすい性質を持っています。
これが錆び易い原因です。
鉄製調理器具のメリット・デメリット
鉄製調理器具のメリット
耐熱性に優れており、強い火力で調理できます。高温で調理することで、野菜などにサッと火が通り、余計は水分を出さずにシャキッと仕上がります。
また、蓄熱性が高く、食材の中までゆっくりと熱を通すことで、ムラなく素材の旨味を閉じ込めることができます。
鉄は丈夫で耐久性に優れているため「一生もの」といわれるほど、長く使い続けることができます。
使い込むほどに油がなじみ、焦げ付きにくく使いやすくなっていきます。この「育てる」過程も楽しみのひとつであると考える愛好家も多いですね。
鉄製品のデメリット
➀錆びる
鉄は錆びやすい素材なので、こまめな手入れが必要不可欠です。
シーズニング(油ならし)、使用後の手入れ、正しい保管、この手間はどうしても必要です。
焦げ付きを防ぐために、調理前の油返しをする場合もあります。
少々面倒ではありますが、正しい手入れを続けることで、一生ものの愛用調理器具となります。
②重い
鉄はほかの金属と比べ重量が重く、大きくなればなるほど扱いが大変になります。
「鉄フライパン」と「スキレット」の違い
➀「製法」の違い
まず、「鉄フライパン」と「スキレット」は、作られる工程に大きな違いがあります。
「鉄フライパン」の製法
一般的な鉄フライパンは、高温で加熱した鉄を叩いて成形していく鍛造(たんぞう)という製法で作られています。職人がひとつひとつ丹念に手作りするものもあれば、鉄板をプレスして成形する大量生産のものもあります。
鉄フライパンは一般的に、板状の鉄素材を加工した本体(鍋部分)に柄(ハンドル)をつけた製品を指します。
鉄フライパンの本体の鉄素材は表面加工されたものとして、鉄の表面に酸化皮膜を張った「鉄黒皮」や表面をツルツルの板にし最後に焼き付けて酸化皮膜を作った「ブルーテンパー材」など、様々な加工の種類があり、鉄の厚さも様々です。
価格はリーズナブルなものから高価なものまで幅広く販売されています。
「スキレット」の製法
スキレットは鋳造(ちゅうぞう)という、加熱して溶かした鉄を型に流し込む製法で作られています。
スキレットなどの鋳造は大量生産ができるので、鍛造のフライパンに比べ比較的安価で購入できます。
②「重量」の違い
鉄フライパンは、スキレットに比べると薄く軽いものが多いです。が、大きく持ち手が長い分、それなりの重量はあります。
製品によってさまざまで、厚みによって重量が変わります。
スキレットは鉄フライパンと比べると、分厚くて見た目以上に重いのが特徴です。大きなものは両手で持つ必要があります。
使い分けのポイント
「鉄フライパン」「スキレット」共通の特徴
スキレットも鉄のフライパンも鉄製なので、油なじみや熱伝導率が良く、テフロンなどに比べると断然美味しく仕上がります。
「一生もの」と言われることもあり、鉄製品は手入れさえ怠らなければ長く使うことができるのできます。
基本的は使い方は、スキレットも鉄フライパンもしっかり加熱してから、油を馴染ませて使います。たいていはこの方法で焦げ付かず美味しい料理が出来上がります。
場合によっては、コールドスタートでじわじわと火を入れる調理方法もあります。
鉄フライパンを使う料理
鉄フライパン料理でまず最初におすすめするのが、炒(いた)め料理です。フライパンの底面積の広さを生かし、食材に均一に素早く熱を加えることができます。
具体的には、野菜炒めや炒飯、オムレツ、パスタなど。比較的サッと焼ける焼肉などもオススメです。
スキレットにはできず、フライパンだからこそできるのが「鍋振り」です。「煽(あお)る」とも言われます。
中華料理用語で「あおり炒め」という調理方法があります。
中華料理店のガスコンロは火力が強いので、中華鍋を動かさず木べらやお玉でかき混ぜていては、均一に火を通すことができません。
中華鍋を振り上げ、鍋の中身を上下ひっくり返すように炒めることで、鍋底と上の素材を均一に火を通す事ができます。
また、振り上げた際に素材に空気が入ることで、余分な水分を飛ばし、野菜はシャキッと、チャーハンなどはパラりと仕上がる利点もあります。
炒め物は時間をかけてしまうと、水分が出て必要以上にしんなりと、ベタッとなってしまいますね。
鉄フライパンは、強い火力でスピーディーに仕上げたい炒め料理に最適です。
スキレットに比べると厚さがなく、フライパン全体により早く熱が伝わるのも特徴です。
ほかにも、ステーキや目玉焼き、パンケーキなど、鍋を動かさずじっくり加熱する料理も十分おいしく作ることができます。必要に応じて火力の調整や余熱時間などを調整しましょう。
ちなみに、IHでも使用は可能ですが、中華鍋のような底が丸いものは熱が伝わりにくく相性がよくありません。
また、チャーハンや野菜炒めといった鍋を振る料理も、できないことはありませんが、向いているとはいえせん。
スキレットを使う料理
まず、スキレットは鉄フライパンに比べて炭素の量が多く、表面にできる無数の凸凹によって、油なじみが良くなるという特徴があります
スキレットはその形状や重さから、野菜炒めやチャーハン等の鍋を振るような料理には向いていません。
ステーキやハンバーグ、カレー、パエリア、お好み焼き、パンケーキなど、中までじっくりと火を通す必要がある料理が得意です。
スキレットは厚みがあるので余熱に時間はかかりますが、その分熱が蓄積され、温度が下がりにくいというメリットがあります。冷たい食材を置いても、鉄板の温度はあまり下がりません。
その点を生かし、特におすすめするのが肉料理です。
中心までじっくりと柔らかく仕上がり、鉄フライパンやその他の加工フライパンとは仕上がりに格段の違いがでます。
また、スキレットカバー(蓋)を使用することで、ピラフやパエリア、煮込み料理なども簡単に美味しくできます。
温度が下がりにくい特徴を生かしたパエリヤやアヒージョ、煮込みハンバーグなど、スキレットのままテーブルに置くことで、長時間温かい料理を楽しむことができます。
「鉄フライパン」と「スキレット」お手入れ方法の違い
「鉄フライパン」「スキレット」共通のお手入れ
鉄製品ならではのお手入れ方法が、購入直後のシーズニングです。
工場から出荷され、店頭に並んだ鉄製のフライパンやスキレットは、表面に工業油が塗られた錆止め加工が施されています。
この錆止めを落とし、新たに鉄の表面の細かな穴を食用油でコーティングするのがシーズニングです。
このシーズニングがされていないと焦げ付きはもちろん、作った料理が鉄臭さで食べられたものではありません。
最近ではシーズニングが必要ない製品も多く販売されているので、その場合は購入してすぐ調理をはじめることができます。
スキレットや鉄フライパンをしばらく使わない場合や、キャンプやアウトドアでしか使わない場合は、新聞紙にくるんで湿気の少ない場所に保管しましょう。
万が一錆が出てしまっても、シーズニングをすることで復活することができます。
使いこんでいくと、調理もしやすく手入れも楽になっていきます。
シーズニング方法に関する記事はこちら⇩
「鉄フライパン」のお手入れ方法
使用後はできるだけ早く料理を別の器に移します。
フライパンがなるべく熱いうちに、たわしなどを使ってお湯で洗い流します。なるべく洗剤は使いません。
水分を拭き取り中火にかけ、空焼きをして水分を完全に蒸発させます。
火を止め、熱さが落ち着いたらフライパンの表面に油をまんべんなく塗ります。
鉄フライパン=金たわし、というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、金タワシはせっかくの酸化被膜や油膜も削り落としてしまいますので、できれば使いたくないところ。
焦げなどもなるべく亀の子たわしやササラを使うのがおすすめです。が、フライパンの外側に焼き付いた焦げなど、焦げ付きが頑固なときには金たわしを使う場合もあります。
「スキレット」のお手入れ方法
フライパン同様、料理後はなるべく早く別の器に移すことで錆を防止します。
スキレットの場合、スキレットのまま食卓に出すことも多いと思います。
その場合は食事が済んだらすぐ残った料理を別皿に移しましょう。
使用後は、たわしを使ってお湯で汚れを落とします。
焦げがなかなか落ちないときは、水を入れて火にかけ、焦げを柔らかくして木べらなどでやさしくこそげ取ります。
水分を拭き取ったら火にかけ、水分を完全に蒸発させます。
熱が少しおさまったところで食用油をまんべんなく塗り、そのまま中火で10分加熱し続けます。
火を止め、自然に冷まして保管します。
スキレットを洗う際もできれば洗剤は使わない方がベター。
どうしても取れないこってり油などは薄く洗剤を泡立てたスポンジで洗いましょう。シーズニングがしっかりされていればコーティングが剥がれず汚れだけを洗い流すことができます。剥がれてしまったら、シーズニングをすることですぐ復活できます。
スキレットが熱いうちに冷たい水を入れるのは厳禁。
鋳鉄でできたスキレットは急激な温度変化でひび割れてしまうことがあります。
スキレットが熱いうちは、必ず温かいお湯を入れて洗いましょう。または、一旦スキレットが冷めるのを待ってから、水を入れて再び火にかけて徐々に温度を上げて焦げを落とす方法もおすすめです。
ちなみにスキレットを高いところから落とすと、欠けたりひび割れてしまったりします。一度割れたり欠けてしまったスキレットは残念ながら修復ができません。重量があるので取り扱いには注意が必要です。
保管は、スキレットが冷めてから湿気の少ない場所に保管します。新聞紙などで包むと湿気防止になります。
手入れがいらない鉄製品もある!
これだけ手入れが必要!とお話ししてきた後でなんですが…
鉄フライパンにもスキレットにも、手入れが必要ない、または手入れが楽な製品があります。
鉄の表面に凹凸があるこびりつきにくい鉄の表面に窒化加工を施し錆びにくくした鉄フライパンや、ホーロー加工された鋳鉄製のスキレット、耐熱陶器製のスキレットなどです。
手入れが大変、という理由がネックになっているようなら、ぜひ検討してみてくださいね。
スキレットの選び方はこちらの記事へ↓
必要に応じて使い分けよう
これは私の場合ですが、アウトドアに持ち出すのは圧倒的にスキレットが多く、家庭ではフライパンが多いです。
キャンプやアウトドアでは、じっくりと料理にかける時間がある、というのがなんといっても大きな理由です。
やはり家では毎日の料理にかける時間が限られているので、自然と炒め物が多くなります。もちろん料理によってはスキレットを使うことも多いです。
スキレットは重いというのは想像つくと思いますが、フライパンもそれなりに重量があります。
車移動で荷物制限の心配がない場合はいいのですが、そうでなければ調理器具も選ぶ必要がありますね。
「鉄フライパン」と「スキレット」それぞれの特徴があり、メリットもあればデメリットも。
それぞれの違いや特性を生かして、上手に使い分けていきたいですね。
是非いろいろと試して、アウトドアクッキングを楽しんでください♪
******************************************
lodge社のスキレット
- 材質:鋳鉄
- サイズ(約):8インチ
202×325×深さ43mm - 重量(約):1.49㎏
- IH対応
- 生産国:アメリカ
- 参考価格:3,960円(税込)